本当に喜ばれた一本のガーベラ

本当に喜ばれた一本のガーベラ

義理の父が70歳を過ぎ、2つ目の職場を退職することになりました。65歳で定年退職してからも働くことが好きだった義父は、その後再就職をして真面目に働いてきました。しかし元々高血圧だったのに加え心臓が少し悪くなってきたらしく、特にお金に困っていたわけでもないし家族の説得もあり退職することを決断したようでした。

 

そこで家族みんなで退職祝いを計画することにしました。元々あまり物欲がなく欲しいものを聞いてもあまりはっきりと言うことのなかった義父は、最初の定年退職の際には独断で義母と行ける温泉旅行をプレゼントしたのですが、今回も聞いてもはっきり答えてくれることはないと思い、某有名ホテルの食事券を贈ることにしました。ところが娘がおじいちゃんに花を贈りたいと言い出しました。そこで花束をこの食事券に付けることにしました。

 

当日、花屋に行き娘と花を選びました。娘が「これがいい!」と指差したものは黄色のガーベラでした。どうしてこれがいいのか聞いてみると、おじいちゃんの一番好きな色は黄色だというのです。おじいちゃんの好きな色を知っているのかと少し関心しました。確かに娘とおじいちゃんは仲の良いコンビでいつも楽しく遊んでいるのです。すると娘が「私が買う」と言い出しました。これはお母さんが買うからいいよ、と言いましたがどうしても自分で買いたいのだというのです。娘のお小遣いでは一本買うのがやっとのはず。考えているとお店の人がそれを聞いていて察してくれたのか、「一本をオシャレにラッピングしてあげましょう」と言ってくれました。そして本当にその一本が引き立つようにキレイにラッピングしてくれたのです。

 

その花を受け取った時の義父の嬉しそうな顔を忘れることはできません。ニコニコとして何度も何度もありがとうを言いました。何だか完全に娘のプレゼントに負けてしまいましたが、プレゼントとは本来受け取った人が喜んでくれるために贈るもの。値段ではありません。娘の贈った一本のガーベラは本当に義父の心に届く贈り物だったのだと思います。